看護師の転職活動において、履歴書と並んで重要になるのが「職務経歴書」です。
履歴書が基本情報を伝える書類であるのに対し、職務経歴書はこれまでの経験やスキルをどう活かせるかを具体的に示す“プレゼン資料”の役割を持ちます。
しかし「どう書けば採用担当者に響くのか分からない」という声も少なくありません。本記事では、看護師が職務経歴書を作成する際に押さえるべき基本と、魅力的に伝えるための具体的なノウハウを解説します。
看護師の職務経歴書とは?履歴書との違い
転職活動において提出が求められる書類には「履歴書」と「職務経歴書」がありますが、この2つは役割が大きく異なります。
履歴書が“人物像を伝えるプロフィール”だとすれば、職務経歴書は“これまでの経験や成果を根拠に示すプレゼン資料”です。
特に看護師の場合は、業務内容や専門スキルが多岐にわたるため、職務経歴書をいかに整理して書くかが、採用担当者の判断に直結します。
履歴書=人物像、職務経歴書=実績を示す書類
履歴書は氏名・住所・学歴・資格といった基本情報に加え、志望動機や通勤時間、本人希望などの一般的な内容が中心です。どちらかといえば「人物像を確認するための書類」といえます。
一方、職務経歴書は「どんな職場で」「どのくらいの期間」「どのような業務に従事し」「どのような成果や経験を得たか」を具体的に書く書類です。
つまり、履歴書が「あなたはどんな人ですか?」を示すものなら、職務経歴書は「あなたはこれまで何をしてきましたか?今後どう活かせますか?」を伝えるものだと理解するとわかりやすいでしょう。
採用担当者が職務経歴書で見ているポイント
採用担当者は、職務経歴書から以下の点を重点的に確認しています。
- 臨床経験の内容と深さ:配属病棟(内科・外科・ICU・訪問看護など)や患者層、経験年数。
- 実務スキル:採血・点滴・救急対応・カウンセリングなど、即戦力として求められるスキル。
- 役割・ポジション:リーダー経験、プリセプター経験、委員会活動など。
- 成果やエピソード:離職率改善や新人教育の成功など、数値や具体例で示せるもの。
これらを整理して記載することで、応募先のニーズとあなたの強みが結びつきやすくなります。
看護師ならではの経験の伝え方
看護師の職務経歴書では「日々の看護業務をただ列挙する」だけでは不十分です。採用担当者が注目するのは、そこでどんな力を発揮したか、どんな経験が応募先に活かせるか、という点です。
- 病棟経験:一般病棟での5年間の勤務経験を「急性期患者の全身管理を担当」「夜勤で最大10人を受け持ち」など具体的に表現。
- 教育経験:新人教育や後輩指導をした場合、「新人3名のOJTを担当し、半年で自立をサポート」など成果を数値化。
- 専門スキル:救急搬送対応や緩和ケア、美容施術など、他の職場でも即戦力になるスキルを強調。
このように、「何を経験したか」だけでなく「どう成果を出したか」を書くことで、採用担当者に強い印象を与えることができます。
職務経歴書に必ず盛り込むべき基本項目
看護師の職務経歴書は、採用担当者が「どのような業務経験を持ち、どの場面で力を発揮できるか」を確認するための大切な資料です。履歴書と異なり、自由度が高いため、何をどのように書くかで印象が大きく変わります。
ここでは、必ず盛り込むべき基本項目を整理します。
勤務先・診療科・担当業務の具体的な記載方法
職務経歴書の基本は、勤務先・配属部署・担当業務を具体的に記載することです。
- 勤務先名:病院や施設の正式名称を明記(例:〇〇大学附属病院)。
- 診療科や病棟:内科・外科・小児科・ICUなどを具体的に記載。
- 勤務期間:「2018年4月~2022年3月」と年月を正確に表記。
また、単に「内科病棟勤務」と書くだけでなく、
- 平均受け持ち患者数
- 代表的な疾患や処置内容
- 夜勤の有無
などを補足することで、採用側に現場のイメージが伝わりやすくなります。
役割やポジション(リーダー経験・教育担当など)
採用担当者は「その人がどのような立場で働いてきたか」に注目します。
- リーダー経験:病棟のチームリーダー、日勤リーダーとして勤務調整や指示出しを行った。
- 教育・指導経験:新人教育、プリセプター経験、OJTの担当。
- 委員会活動:感染対策委員会や医療安全委員会などへの参画。
こうした役割を記載することで、単なる「勤務年数」ではなく、組織の中でどう貢献したかが伝わります。特に30代以降の看護師にはマネジメント経験が求められるケースも多いため、忘れずに強調しましょう。
習得スキル・資格の整理方法
看護師としての専門性を示すためには、スキルや資格の整理が不可欠です。
- 実務スキル:採血、点滴、救急対応、終末期ケア、訪問看護、美容施術など。
- 資格・研修修了:認定看護師、専門看護師、BLS・ACLS修了、研修受講歴。
- PCスキル:電子カルテ操作(メーカー名も記載すると親切)。
スキルは「できることを網羅」するのではなく、応募先に役立つ内容を中心に整理するのがポイントです。
例えば、美容クリニックへの応募なら「脱毛・注入系施術介助」など、訪問看護なら「在宅療養支援・ターミナルケア経験」といった具合に、アピールを最適化することが重要です。
- 勤務先・診療科・業務内容
- 役割やポジション
- 習得スキルや資格
この3つを中心に盛り込むことで、採用担当者に「即戦力として活躍できる姿」を明確に伝えることができます。
採用担当者に響く!魅力的に伝える3つのコツ
職務経歴書は、単なる経歴の羅列ではなく「自分をどう魅せるか」のプレゼン資料です。看護師としての経験をどう伝えるかで、採用担当者の印象は大きく変わります。
ここでは「数字」「ストーリー」「即戦力」という3つの視点から、実際に響く職務経歴書の書き方を解説します。
「実績は数字で」業務量や成果を見える化する
看護業務は患者数や件数で測れる部分が多く、数字を入れることで説得力が増します。
- 悪い例:「患者さんに寄り添った看護を行った」
- 良い例:「整形外科病棟で1日平均10名の患者を受け持ち、術後管理やリハビリ指導を実施」
このように、担当患者数、処置件数、指導回数などを数字で表すと、採用担当者は「どれくらいの規模で働いてきたのか」を具体的にイメージできます。
さらに、離床率の改善やインシデント件数の減少など、成果が見える指標があれば積極的に記載しましょう。
「行動+結果」でエピソードをストーリー化する
職務経歴書には単なる業務内容だけでなく、自分の行動とその結果を書くことが効果的です。
- 行動:「新人看護師3名の教育担当として、技術指導マニュアルを作成」
- 結果:「半年後には新人全員が夜勤に独り立ちでき、離職者ゼロを達成」
このように「どのような課題に取り組み→どう行動し→何を達成したか」を1〜2文で書くと、ストーリー性が出て読み手の印象に残ります。特に教育・チームワーク・改善活動に関するエピソードは高評価を得やすい分野です。
「即戦力アピール」で入職後のイメージを与える
採用担当者が最も知りたいのは「この人が入職したら何ができるか」です。そのため、過去の経験を「入職後にどう活かせるか」という形でつなげることが大切です。
- 例文:「整形外科病棟で培った術後リハビリ指導の経験を活かし、貴院での術後早期離床の取り組みに貢献したい」
- 例文:「訪問看護での終末期ケア経験を活かし、地域包括ケア病棟での看取り支援に役立てたい」
このように「スキル→今後の活用」という流れで書くと、採用担当者は入職後の姿をイメージしやすくなります。
- 数字で業務量や成果を示す
- 行動+結果でエピソード化する
- 即戦力としての活かし方を提示する
という3点を押さえることが重要です。これらを意識することで「ただの経歴」ではなく「採用したい人材」として強くアピールできます。
よくある失敗と改善ポイント
職務経歴書を作成するとき、多くの看護師が陥りやすい「失敗パターン」があります。内容が曖昧だったり、一貫性がなかったりすると、本来のスキルや経験が正しく伝わりません。
ここでは、よくある失敗とその改善ポイントを整理します。
業務内容が“羅列”だけになっている
失敗例
- 「点滴管理、バイタルチェック、採血、注射、服薬指導」など、日常的な業務を単に列挙してしまう。
- 読み手にとって「どの職場の看護師でもやっている業務」としか映らず、強みが見えない。
改善ポイント
- 羅列ではなく、「どのような規模で」「どんな工夫をして」業務を行ったかを加える。
- 例:「1日平均10名の術後患者を受け持ち、早期離床に向けた看護計画を実施。退院支援チームと連携し、平均在院日数の短縮に貢献。」
このように具体性を持たせることで、同じ業務でも「成果」や「役割」が伝わります。
専門用語ばかりで採用担当に伝わらない
失敗例
- 医療者同士では通じる略語や専門用語をそのまま書いてしまう。
- 例:「ADL低下」「CPA対応」「ルート確保」など、医療に携わっていない採用担当にはイメージが湧きにくい。
改善ポイント
- 専門用語を使う場合は、簡単な説明を添える。
- 例:「ADL(日常生活動作)が低下した高齢患者に対し、食事・更衣・移動のリハビリ介助を実施」
- この一工夫で、医療知識のない事務方や人事担当者にも伝わりやすくなります。
採用担当は必ずしも医療専門職とは限らないため、“誰が読んでも理解できる”文章を意識することが重要です。
志望動機やPRと一貫性がない
- 職務経歴書では「リーダー業務経験」をアピールしているのに、志望動機では「患者さんと寄り添う看護がしたい」と記載している。
- このように、アピール内容がバラバラだと「結局、この人は何を強みとしたいのか」が伝わらず、評価が下がる可能性があります。
- 履歴書・職務経歴書・志望動機を同じ“軸”に揃えること。
- 例:「教育担当として新人指導に注力してきた」→「貴院でも後輩育成に力を発揮し、チーム全体の成長に貢献したい」
このように「過去の経験」と「これからやりたいこと」をつなげると、一貫性のあるメッセージになります。
ポイント:職務経歴書でありがちな失敗
- 業務の羅列で強みが伝わらない
- 専門用語ばかりで理解されない
- 志望動機と一貫性がない
という3点に集約されます。
改善するためには、具体性・平易な表現・一貫性を意識することが大切です。これだけで、採用担当者に「会ってみたい」と思わせる書類に変わります。
付録:職務経歴書 最終チェックリスト(改善ポイント付き)
このチェックリストを活用することで、「失敗しがちな職務経歴書」を「採用担当者に伝わる職務経歴書」へと仕上げられます。
- 業務内容が羅列だけになっていないか?
→ 数字や具体例を加えて「成果」や「役割」が伝わる形に書き直す。 - 専門用語が多すぎないか?
→ 医療従事者以外でも理解できるように補足説明を添える。 - 志望動機や自己PRと一貫性があるか?
→ 「過去の経験」と「今後やりたいこと」をつなげてストーリー性を持たせる。 - 読む人の視点を意識できているか?
→ 採用担当者が知りたいのは「あなたがどのように貢献できるか」。強みを意識して修正する。 - 見やすさは担保できているか?
→ 箇条書きや段落分けで、ひと目で理解できるレイアウトになっているか確認。
フォーマットと提出前チェックリスト
履歴書や職務経歴書を提出する際に、「どのフォーマットを選ぶか」「提出前に何を確認するか」は合否を左右する重要なポイントです。
ここでは、看護師転職でよく利用されるフォーマットの種類や、それぞれの特徴、そして提出前に必ず押さえておきたいチェック項目を整理します。
看護師転職でよく使われるフォーマットの種類
看護師の転職では、以下のフォーマットがよく使用されます。
- Word形式(.docx):修正やカスタマイズがしやすく、エージェント経由で提出する際に指定されることが多い。
- Excel形式(.xlsx):表組みを活かした記載が可能で、職務経歴やスケジュール感を整理しやすい。
- PDF形式(.pdf):レイアウトが崩れにくく、最終的な提出フォーマットとして一般的。
特にエージェントを利用する場合は、まずWordやExcelで作成・修正し、最終的にPDFで提出する流れが多いといえます。
Word・Excel・PDFそれぞれの特徴
- Word:文字数の調整がしやすく、文章中心の自己PRや志望動機を整えるのに適しています。
- Excel:行・列で見やすく整理できるため、複数の勤務先を経験している看護師におすすめ。
- PDF:印刷してもレイアウトが崩れないため、正式提出用に最適。企業側から「PDFで送付してください」と指定されることもあります。
ポイント:「編集用」と「提出用」を分けて考えること。修正段階ではWordやExcelを使用し、提出時には必ずPDF化して保存しておくと安心です。
誤字脱字・空欄チェック、提出マナー
提出前には、以下のチェックリストを活用しましょう。
✅ 提出前チェックリスト
- 誤字脱字や入力漏れがないか
- 学歴・職歴が時系列で正しく記載されているか
- 空欄がなく、必要に応じて「特になし」と記載しているか
- 写真は清潔感があり、規定サイズで貼付されているか
- 提出形式(PDFなど)が指定どおりか
提出マナーも大切です
- 郵送する場合:封筒は白無地、A4サイズを折らずに送付。送付状を添付するのが基本。
- メール提出の場合:件名は「履歴書・職務経歴書送付の件」、本文には簡潔な挨拶文を添える。
- LINEや専用システムで提出する場合:指定フォーマットに従い、ファイル名は「氏名_履歴書.pdf」とわかりやすく設定。
最後に誤字脱字や空欄を確認し、提出マナーを守ることで、採用担当者に「丁寧で信頼できる人」という印象を与えられます。
まとめ|職務経歴書で「あなたの強み」を伝えよう
職務経歴書は、単なる経歴の羅列ではなく、看護師としての「強み」を具体的に示すための重要なツールです。
履歴書とセットで提出するからこそ、一貫性を持った自己PRを盛り込み、採用担当者に「この人と一緒に働きたい」と思わせることが大切です。
- 履歴書は人物像を伝える書類、職務経歴書は 経験やスキルを可視化する書類 として役割を分けて意識すること
- 実績はできるだけ数字で表し、エピソードを「行動+結果」でストーリー化すること
- 志望動機や自己PRとのつながりを持たせ、一貫したメッセージを伝えること
これらを意識するだけで、同じ経験でも「魅力的なアピール」に変えることができます。
そして、最終的には「あなたがこれまで積み上げてきた看護師としての経験」が、どんな職場でも活きるという自信を持つことが大切です。書類の完成度を高めることで、面接にも安心して臨めるはずです。
💡もし「自分の強みをどう整理すればいいかわからない」「実績を数字で表すのが難しい」と感じたら、プロに相談してみるのもひとつの方法です。LINEから無料相談が可能ですので、まずはお気軽にキャリアアドバイザーへお声がけください。
















