看護師という仕事に「やりがい」を感じているのに、なぜかモヤモヤする理由
看護師という仕事は、命を支えるやりがいのある仕事です。しかし、「やりがいがある」ことと「満たされている」ことは、必ずしもイコールではありません。
自分でも説明のつかない“モヤモヤ”があるとしたら、それは何なのか──。ここでは、仕事にやりがいを感じているにもかかわらず、内面に生まれる違和感の正体に目を向けていきます。
やりがいがあるのに、なぜか不安になる瞬間
多くの看護師は、人の命に携わる責任の重さや、患者からの「ありがとう」によって、やりがいを感じています。
しかし、夜勤明けの帰り道や、休日にふと感じる「このままでいいのかな?」という感覚。これは決して特別なものではなく、誰もが一度は抱えるものです。
自己実現ができていない、あるいは自分の生活が置き去りになっているときに、このモヤモヤは現れやすくなります。看護師という職業の特性上、「仕事=人生」となりやすいからこそ、仕事以外の時間や価値観が薄れていく危険性があります。
周囲と比べてしまう、自分のライフステージ
同世代の友人が結婚したり、出産したりする姿を見ると、つい自分の生活と比べてしまうものです。「私は仕事をしているだけで、人生が進んでいない気がする」と感じることもあります。
この感情は決して珍しいものではなく、特に20代後半〜30代前半の女性看護師に多く見られます【注1】。
看護師として成長している実感があっても、「仕事以外の人生設計が遅れているのでは?」という焦燥感に悩むことがあります。こうした比較が、やりがいと裏腹のモヤモヤを引き起こす要因となります。
「働きがい」と「生きがい」のズレ
看護師としてのキャリアは順調に進んでいるはずなのに、プライベートではやりたいことが制限されている、という感覚を持つ人も多いです。
夜勤や急な呼び出し、生活リズムの乱れによって、自分の時間を確保するのが難しい現状。それにより、やりたい趣味や学び直し、副業への挑戦などが「いつかやりたいこと」として先延ばしされてしまいます。
この「やれていない」感覚の積み重ねが、日常の充実感を損ない、仕事のモチベーションに影響を与えることすらあります。
【注1】『看護師のキャリアに関する実態調査』(日本看護協会, 2023年)より
「働きやすさ」を求めるのは、わがままなのか?
「やりがい」とは別に、「働きやすさ」も大切な価値観です。ただし、“働きやすさを求める=逃げ”のように捉えられてしまう現場の空気に、葛藤する方も多いのではないでしょうか。
ここでは、働きやすさを求めることの意味と、それがキャリアにどう影響するのかを掘り下げます。
周囲にどう思われるかが気になる心理
「日勤だけの職場に異動したい」「もっとゆとりのある働き方をしたい」と感じていても、「それって甘えかな?」「周囲にどう思われるかな?」と、自分の気持ちを押し込めてしまう看護師は少なくありません。
しかし、働きやすさは決して“わがまま”ではなく、長くキャリアを続ける上での重要な基盤です。むしろ、無理を続けた結果、心身を壊してしまえば、やりがいどころではなくなってしまいます。
職場の空気や同僚の目線よりも、自分の心と身体の声に耳を傾けることが、健全な働き方への第一歩です。
働きやすさを求めた先にある可能性
「働きやすさ」を大切にした職場選びは、キャリアを長期的に持続させる上で極めて合理的な判断です。
合理的選択理論(Rational Choice Theory)では、人はコストとベネフィットを比較して最も合理的な選択をするとされます。
収入がやや下がったとしても、夜勤がなくなり、体調や生活リズムが整えば、人生の満足度は大きく向上する可能性があります【注2】。自分にとって「働きやすい」職場は、結果的に成長もしやすくなるという循環が生まれるのです。
「働きやすい」からこそ挑戦できることもある
心と体に余裕ができると、新しい学びや副業、趣味など、これまで後回しにしていたことに挑戦する余裕が生まれます。
これは一見「仕事と関係ない」と思われるかもしれませんが、自分を成長させる経験となり、看護の現場にも好影響をもたらします。働きやすさは、単なる労働環境の改善にとどまらず、自分の可能性を広げる鍵でもあるのです。
【注2】合理的選択理論に基づくキャリア意思決定(厚生労働省 キャリア形成支援調査, 2022年)
「給料」と「生活コスト」のバランス、見直してみませんか?
「給与が良いから今の職場にいるけど、正直、生活の質は下がっている気がする」。そんな声を聞くことがあります。
ここでは、看護師の収入と生活コストのバランスについて考え、自分にとって本当に大切なことを見直していきましょう。
「高収入=幸せ」とは限らない
看護師は比較的安定した給与を得られる職種です。しかし、高収入と引き換えに夜勤や長時間労働が続くことで、健康を害したり、私生活が犠牲になっている人も少なくありません。
収入の多さだけで満足度が決まるわけではなく、「そのお金を使う時間があるか」「自分にとって本当に価値ある使い方ができているか」が、暮らしの質を大きく左右します。
今一度、自分にとっての“豊かさ”とは何かを見つめ直してみましょう。
生活コストと時間コストの関係性
家賃の高いエリアに住み、通勤に時間をかけ、仕事の疲れで外食が増え…という生活は、知らず知らずのうちに「生活コスト」と「時間コスト」を膨らませています。
収入が多くても、自由に使える時間が少なく、心が休まらないのであれば、暮らしの快適さは損なわれているかもしれません。必要以上の出費を見直し、生活スタイルを整えることで、給与以外の満足度を高めることができます。
「収入を減らしても暮らしやすくなる」選択もある
思い切って夜勤のない職場に転職したり、週4勤務に切り替えることで、収入は減っても生活の質が向上することもあります。実際、そうした選択をして「毎日が穏やかに過ごせるようになった」という声も増えてきました【注3】。
今の職場で得られる収入と、他で得られる生活の充実感──どちらが自分にとって大切かを天秤にかけてみると、意外な選択肢が見えてくることもあります。
【注3】看護師転職経験者インタビュー(ホスキャリ看護メディア, 2024年)
“私らしい働き方”ってどうやって見つけるの?
「私らしい働き方」とは、他人と比べて見つかるものではなく、自分の価値観に素直に向き合うことでしか見つかりません。
このセクションでは、自分らしい働き方を考えるために必要な視点やステップをご紹介します。
価値観の優先順位を言語化する
人は状況によって価値観が変わります。仕事に全力投球したい時期もあれば、家族や趣味を優先したくなることも。だからこそ、「今の自分が何を大事にしたいか」を一度言葉にしてみましょう。
「時間の余裕」「職場の人間関係」「やりがい」「給与水準」──これらの項目に自分なりの順位をつけてみると、職場選びや働き方の軸が明確になっていきます。
5年後、10年後の自分を想像する
キャリア形成には「逆算思考」が有効です。
今の職場で5年後も働きたいか?今の生活スタイルが10年後も続いていたらどうか?──こうした問いを自分に投げかけることで、「今の選択が未来にどう影響するか」を可視化できます。
看護師という専門職はどこでも通用する力があるからこそ、自分のキャリアを“自分で決める”ことが可能なのです。
「選べる自分」になるための行動
“私らしい働き方”を実現するには、選べる選択肢を持っていることが大切です。そのためには、日頃からスキルアップや情報収集、仲間づくりを意識しましょう。
たとえば、勉強会に参加したり、副業やSNSで自分の発信をしてみたり。行動を起こすことで、見える世界は大きく変わります。自分にしかない強みを磨き、選ばれるだけでなく“選べる側”に立ちましょう。
“これからの自分”を描くために、できること
モヤモヤの正体が見えたなら、次にすべきは「動くこと」。とはいえ、大きな一歩を踏み出すのは簡単ではありません。
ここでは、小さな行動から始めていける方法と、将来のために今できることを一緒に整理していきます。
まずは「理想の生活」を言語化してみる
転職や働き方を考えるとき、まず立ち止まってほしいのが「自分にとって理想の生活とは何か」という問いです。
朝は何時に起きて、どんな気持ちで一日を始めたいのか。誰と過ごして、どんな時間を大切にしたいのか。これを言語化することで、現在の働き方とのギャップが見えてきます。
合理的選択理論では、複数の選択肢を比較して最大の満足を得る行動が人間にとって合理的とされますが、自分の理想が明確でなければ合理的な選択は難しいのです【注2】。
情報を集めて、世界を広げる
看護師のキャリアは、情報の量と質で大きく変わります。SNSやインタビュー記事を通じて、実際に転職した人の声を知ることで、自分の視野も広がります。
現場を離れた看護師の活躍や、ワークライフバランスを大切にした働き方に触れることで、「こんな選択もありなんだ」と気づくことができるでしょう。
今や、看護師専用のキャリアコミュニティも増えており、気軽に相談できる場所も増えています。
「一人で抱えない」選択をする
多くの看護師が「もう少し頑張ってから」と一人で悩みを抱えがちです。でも、キャリアの悩みは、専門家に相談することで一気にクリアになることもあります。
信頼できる転職エージェントやキャリア相談サービスの活用は、「逃げ」ではなく、「整理」と「決断」のサポートです。
自分一人の視点では見えない選択肢や可能性を、第三者と対話することで見つけることができます。
【注2】合理的選択理論(Herbert A. Simon, 1957)に基づく意思決定論より
あなたの「これから」を、少しずつ整えていこう
看護師としてのやりがいを感じつつも、プライベートが犠牲になっていると感じたとき。それは人生の転機かもしれません。
「暮らしやすさ」と「働きがい」は、どちらかを選ぶものではなく、バランスを整えていくもの。今の働き方に違和感を覚えるあなたへ──。少しでも心が動いたなら、まずは一歩踏み出す準備をしてみませんか?
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